NPO法人ともに生きる街ふくおかの会: 3月 2017

2017年3月24日金曜日

相談の現場より:学校と医療に関わること

 3月の例会で話題にしていただいたことを、本会の理事である古城さん(行政書士)に簡単にまとめていただきました。お仕事柄、外国人家族や学校と接する場面で、さまざまな課題が見えていらっしゃるように思います。

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ある外国人家族には、小学生2人、中学生1人のお子さんがいます
その子たちが通う学校から、「結核診断のお知らせ」が来ていたのですが、まずその家族には日本語が読める人がいません。
うちの事務所に書類を持ってきて、学校に問い合わせて、検診の予約をし、当日付き添いました。

学校側からは、「この校区には古城さんの事務所があるから良いけど、他の地区からこういう声が上がった時にもお願いできますか?
と言われました。
安請け合いもできないので、きっぱりとお断りしましたが、そのようなニーズがあることははっきりしています。

会員より、以下二つの情報を得ることができました。通訳のみならず診断の付き添いもしてくれるそうです。

「福岡アジア医療サポートセンター」
http://asian-msc.jp/index.htm

「多言語医療問診票」
http://www.kifjp.org/medical/

なぜ、学校関係者がこの情報を知らなかったのかは疑問ですが、とにかくこの制度を周知していく必要がありますね。
それ以前の、「お手紙が読めない」という課題についても取り組んでいかなければいけません。
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 今回の例は、せっかく多言語のサポートがあっても、それがあまり認識されていない例かもしれません。
 学校と医療が関係する話題ですが、それぞれがそれぞれの場で工夫していることをもっと共有していくことができれば、より共に生きやすい生活空間づくりができるのではないでしょうか。
 そのためにも、「多様な情報を、人を、組織をつなぐ」、そんな役割がともいきにますます求められていると思います★★

2017年3月17日金曜日

第1回多文化社会実践研究フォーラムに参加して

 先日、東京にて開催された第1回多文化社会実践研究フォーラムに参加した、ともいき会員の高柳さんより、参加記が届きましたので、みなさんと共有したいと思います。

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 新年に入ってすぐにこちらのブログでもご紹介いただきました東京都内で開催された
「多文化社会専門職機構設立記念 第1回多文化社会実践研究フォーラム」に参加してきました。

 開催日が2月26日(日)であったため、少し時間がたってしまいましたが、多文化社会の問題解決に向けた動きとして情報共有できればと思い、ご案内させていただきます。

 「第1回多文化社会実践研究フォーラム」を主催したのは、同日に発足した「多文化社会専門職機構」です。任意団体でありますが今後の法人化を検討しています。事務所は東京都内です。

 より多文化化が進む日本において、教育、法律、医療、行政などのさまざまな分野で多文化社会の問題解決に取り組む人々に学びとネットワーク形成の場を提供するとともに、認定事業を通じて問題解決に貢献できる人々を専門職として輩出することを目的にこの機構は設立されました。

 機構では3つの事業を展開します。
① 認定事業(多文化社会コーディネーター、相談通訳者)
② 実践研究事業
③ 社会発信事業
④ その他本機構の目的を達成するために必要な事業

 この内①の認定事業において、2017年2月26日、多文化社会専門職機構 第1回理事会において認定委員会の審査結果が承認され、5名の多文化社会コーディネーターが誕生しました。私もその内の1名として認定されました。

 そして、③の事業にあたる「第1回多文化社会実践研究フォラーム」が同日の午後から開催されました。
まず多文化社会専門職機構の概要説明、設立にあたっての思いが関係者から語られたのに続き、ワールドカフェ「わたしの実践を私たちの実践に−多文化社会としての日本の課題と実践を語り合う−」が行なわれました。

 参加者は100名を超え九州からの参加者もあり、全国様々な地域からの参加者が集いました。ワールドカフェを通して、私も多文化社会に関わる様々な方々の出会いと、自らの実践の振り返りができました。そして、新たなつながりができた機会となりました。

当日の模様は多文化社会専門職機構のブログにて紹介されています。

 誕生したばかり新しい団体でありますが、多文化社会をデザインしていくために、さまざまな立場の人々が集う「広場」の役割も持った機構となると思います。
 今後、私も九州からこの機構を通して、更なる出会いと学び等得ていきたいと考えています。
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 今後、どのような活動が展開されるか、楽しみですね!

2017年3月14日火曜日

ドイツにおける共に生きるための試み

 事務局の伊藤です。3月上旬にドイツに一週間ほど滞在する機会がありました。難民受け入れでなにかと話題になるドイツですが、文化的背景の異なる人々と共に暮らす社会を作るための試みについて、今回興味深かったことを少し共有したいと思います。

 今回の滞在は、ビーレフェルトというドイツ北西部の街に主に滞在しました。地理の授業でよく名前を聞く、ルール工業地帯のあるノルトライン・ヴェストファーレン州の街です。
 この街では、昨年から「レイシズムに抗する行動週間」を3月に設定して、あらゆる差別や偏見、異文化理解に関わるさまざまなイベントを開催しています。3月21日の国際人種差別撤廃デーにメイン・イベントが行われるのですが、実際のところは「行動週間」と謳いつつも、行動月間(!)になっています。
 私が今回参加することができたのは、3月8日のイベントで「複層差別」に関わるものでした。具体的には、移民と障がいについてです。「移民」であることで、言葉や宗教などの文化的な違いによって、差別されることがあるのですが、これにさらに「障がい」が重なり、さらなる差別を受けるということに関するものでした。この差別を少しでも低減するために、何が必要なのかということが講演や分科会で話し合われました。
 特に印象に残っているのは、「社会参加のためには何が必要か?」という点が一貫して考えられていた点です。移民の持つ文化とドイツ文化で、「ハンディ」を持った人をどう支えるのか、家族で支えるのを基本とするのか、コミュニティで支えるのを基本とするのか、その考え方が文化によって異なることが挙げられました。これを踏まえ、コミュニティで個々の社会参加を支えようとするドイツ社会のリソースに、移民の人々がどのようにアクセスしうるのか、そのための合理的配慮について話は進みました。ドイツ人であろうと移民であろうと、障がいをもつ子どものための教育に対する親の関心は同様に高く、障がいを持つ子どもに必要となる力を指向した教育の必要性やそれにアクセスするための条件などが示されました。
 私が参加した分科会では、「ことば」に議論が集中していましたが、マジョリティが持つ偏見と異なりに対する寛容性についても話が及びました。「ハンディ」(移民であること、障がい者であること、女性/男性であること、ムスリムであること…等)は生得的にもたらされたものと社会が作り上げているものがあると。それに対して、私たちはいかに自覚的になり、寛容になれるのか、といったことが話されていました。
 話は移民・難民に対するドイツ語教育、さらには視覚・聴覚障がいを持った人に対するドイツ語教育、宗教教育などにも及びました(ドイツは宗教教育が公教育の中でも提供されています。近年は、ドイツ人の多くを対象としたキリスト教教育だけでなく、イスラム教の授業やすべての宗教を扱った宗教の授業も提供されるようになっています)。
 1日に渡るイベントでしたが、非常に内容の濃いものでした。

 これとは別に、「対話」についても考えさせられることが滞在中にありました。
 インド人とドイツ人の国際結婚家族、トルコ人とドイツ人の国際結婚家族と一緒に食事をしていたときに、トルコ人の友人に言われたことばです。

「『対話』が重要なのは分かるけれども、そうする気がない人を目の前にしたときに一体何ができるのだろうか?」

 私が答えに窮している間に話題は移り変わりましたが、友人が投げかけた一言は非常に大きなものだと思います。「対話」と言ってしまうのは簡単ですが、相手に本当に向き合おうとしたときには、大きなエネルギーを必要とします。私たちは日頃、どれだけ他者に向き合っているのでしょうか。
 成田空港で荷物をピックアップし、出口を出た際、図らずも東日本大震災が起こったそのときであり、黙祷を捧げるアナウンスが流れました。目を閉じ、耳を澄ませた短い時間にも、感情はわき出し、耳には時の流れる音が入ってきます。私たちはそんなことを感じる余裕も普段は持ち合わせていないかもしれません。
 共に生きるために、差別や偏見について考えるのは、他者に向き合い、自分の中にもある差別に向き合うことでもある、そして向き合う余裕を持つことの重要性を改めて考えさせられた旅行になりました。

2017年3月11日土曜日

西日本国際財団第18回アジア貢献賞の授賞式

 先日、ともいきが西日本国際財団第18回アジア貢献賞を受賞したご報告をしました。
 8日にその授賞式があり、代表理事の吉谷と副代表理事の今村が参加しました。代表理事の吉谷より、受賞の感想をお届けします。

*********西日本国際財団第18回アジア貢献賞を受賞して*********

 3月8日(水)、第18回西日本国際財団アジア貢献賞、第12回西日本国際財団アジアKids大賞の授賞式に参加しました。

 既報の通り、ともいきふくおかは、ボランティア団体として活動開始して以来、17年に及ぶ地道な活動を評価していただき、アジア貢献賞を受賞しました。特に、どちらかというと地味な活動を続けてきた本会ですが、その「縁の下の力持ち」的な活動について、「非常に大切な活動で、今後とも活動の継続を大いに期待している」というお褒めの言葉をいただき、改めて、今後の活動へのエネルギーをいただいた思いです。

 活動の中心地である福岡市は国家戦略特区として「グローバル創業都市」を謳っており、外国人人材の積極的な迎え入れを進めています。私たちの会は、そうした人材が多様な文化をもたらす多文化住民としてともに暮らせるよう、ますます活動を活発にしていく必要があると考えます。

 今回選んでいただいた財団と応援をいただいた皆さんに感謝の意を表し、今回の受賞を機に、「ともに生きる街ふくおか」を目指して、地道に、持続的に活動を続けていきたいと思います。
 今後ともよろしくお願いいたします。

NPO法人ともに生きる街ふくおかの会 代表理事 吉谷武志

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 授賞式には過去の受賞者も招待されるのですが、ともいきより一足先に受賞されていた香椎浜小学校親子日本語教室「よるとも会」からも授賞式に参加していました。

 よるとも会のブログで授賞式の様子が紹介されているので、是非こちらもご覧ください♪